
家族信託でできること・できないこと

前回の記事では、「家族信託ってなに?」というテーマで、仕組みや基本的な考え方をご紹介しました。
今回はもう一歩踏み込んで、家族信託で「できること」と「できないこと」を解説します。
まずはおさらい:家族信託とは?
簡単にいうと、「自分の財産を、信頼できる家族に託して、将来の管理や承継をスムーズにする仕組み」です。
たとえば…
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〇父が、自分の家を信頼する長女に信託する
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〇将来、父が認知症になっても、長女が家の売却や管理をできる
このように「資産凍結」を防ぎ、家族が困らないように備えることができます。

① 認知症になっても不動産の管理・売却ができる
一般的には、認知症になると不動産の売買はできなくなります。
しかし、家族信託をしていれば、受託者が代わりに契約を行うことが可能です。
→ たとえば、「親が施設に入ることになったので自宅を売却したい」というケースでも、すぐに行動できます。
② 遺言のように「財産の承継先」を決められる
家族信託では、「誰に、いつ、どのように財産を引き継ぐか」を自由に設計できます。
たとえば…
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「父 → 娘(受益者) → 孫」
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「父 → 長男に管理させて、利益は母に」
といった、2次承継・3次承継も設定できるのが大きな特徴です。
③ 収益物件の運用を家族に任せられる
アパートや貸家などの収益物件も信託可能です。
認知症対策だけでなく、将来の空室対策や修繕対応も、受託者が行えるようになります。
→ 「高齢の大家さんの代わりに子どもがアパート経営を続ける」といったことも可能です。
④ 成年後見制度の代わりになる(柔軟性あり)
成年後見制度は、本人が認知症になった後に、裁判所が後見人を選んで財産管理をします。
しかし、手続きや報告義務が煩雑で、自由に動けないデメリットも…。
家族信託なら、自分で「誰に任せるか」を決められ、柔軟な対応が可能です。
⑤ 将来のトラブル防止(兄弟間の争いなど)
信託契約であらかじめ承継の内容や利益配分を決めておけば、将来の相続トラブルを未然に防ぐこともできます。

① 相続税・贈与税の節税そのものはできない
家族信託=節税、と誤解されがちですが、信託自体に節税効果はありません。
財産の所有者は変わらず「委託者本人」扱いとなるため、相続税評価額は通常どおり課税されます。
節税を狙う場合は、別の対策(生命保険、贈与、法人化など)との組み合わせが必要です。
② 受託者が「自由に使う」ことはできない
信託された財産は、受託者のものではありません。
受託者はあくまで「管理者」。
勝手に売ったり、個人的に使ったりすることはできません(違反すれば損害賠償の対象にもなります)。
③ 借金や負債までは肩代わりできない
信託できるのは「プラスの財産」のみです。
借金や連帯保証、住宅ローンなどの「負債」は信託の対象外となります。
④ 不動産の信託には「登記」が必要
不動産を家族信託すると、その内容を法務局で「信託登記」しなければなりません。
登記費用や司法書士報酬がかかるため、実行にはある程度の準備とコストが必要です。
⑤ 仕組みが複雑。契約ミスはトラブルのもと
家族信託は、契約内容がすべて。
「将来こうなるつもりだったのに、契約書に書かれていなかった!」というトラブルも実際にあります。
→ 専門家(司法書士・弁護士など)と一緒に作成するのが必須です。
編集後記
家族信託は、うまく使えばとても頼れる制度です。
しかし、「何ができて何ができないか」を正しく理解しておくことがとても大切。
「うちの場合はどうなるの?」「将来に備えて準備したい」など、気になる方はお気軽にご相談ください♪

